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越前漆器(チームD)

 みなさん、こんにちは。福音のマーメイド・チームDのキャプテン、|越前漆器《えちぜんしっき》です。よろしくお願いします。

 さて、まずは『チームD』の『D』ってなんの略なんだ、ってお話からですけど。これ、『伝統的工芸品』の略なんですよ。伝統的工芸品のD。
 わたしたちチームDは、現在、正規メンバーとして7名、他に研究生として28名の伝統工芸品が在籍しています。福井が誇る伝統工芸品で結成されたスペシャルチームですからね。みなさん、ぜひとも応援よろしくお願いします。

 えー、続いて、わたしの自己紹介をさせていただきます。
 『|漆器《しっき》』って、|漆《うるし》の|器《うつわ》って書くんですけど、その名のとおり、主に食器なんかに漆を|塗《ぬ》って作られた工芸品のことで、日本だけじゃなくアジアの広い範囲で昔から作られているんですけど。その中でも、福井県の|鯖江《さばえ》市|河和田《かわだ》地区を中心に生産されている漆器のことを、越前漆器と呼んでいます。

 わたしのルーツはですね、なんと6世紀くらいまでさかのぼるそうなんです。6世紀って言ったらあれですよ、前方後円墳ブームの頃ですよ。ナスカの地上絵より先輩ですからね、わたし。
 その頃、今の福井県にあたる|越前国《えちぜんのくに》を治めていたのが、まだ皇子だった頃の|継体天皇《けいたいてんのう》という方なんですけど。この方、福井の|礎《いしずえ》を作った方と言ってもいいくらい偉大な方なんです。
 当時はただの巨大な水たまりだった福井平野に、大規模な治水工事を行って、|九頭竜川《くずりゅうがわ》、|足羽川《あすわがわ》、|日野川《ひのがわ》といった福井を代表する河川を作っちゃったんですよ。今の福井が日本有数の米どころになったのも、この方のおかげなんです。すごいですよね。今でも、福井市の中心部にある|足羽山《あすわやま》には、継体天皇を|讃《たた》えた石像が建てられています。

 で、ある日、皇子の冠が壊れちゃったので、地元の|片山《かたやま》というところの|塗師《ぬりし》に修理をお願いしたらしいんです。で、その塗師はキレイに直した上に、さらに黒塗りのお椀を|献上《けんじょう》したそうなんですよ。それを受け取った皇子が、見事な出来栄えに感心して、漆器づくりを産業にするよう奨励した……というのが、越前漆器のルーツだと言われています。
 そんな昔から、|色艶《いろつや》で世間を|魅了《みりょう》する存在だったんですよ。すごいでしょ、わたし。

 さて、江戸時代に入ると、わたしも流行や新しい技法を取り入れながら進化していきます。京都からは|蒔絵《まきえ》という技法、輪島からは|沈金《ちんきん》という技法を取り入れました。
 ちなみに蒔絵というのは、漆で書いた絵に金粉や銀粉を|蒔《ま》いて装飾する技法です。絵の上に、振り散らすように蒔くから、蒔絵。それから、沈金というのは、刃物で彫った溝に金箔や銀箔を沈めるように押し込んで装飾する技法なんです。金箔を沈めるから、沈金。イメージできましたか?
 このように、華やかさも兼ね備え、わたしの美しさにますます磨きがかかっちゃいました。

 近年では、お椀だけでなく、いろんな製品へと発展し、また販路も全国へと広がっていきました。この活躍が認められて、昭和50年に、福井県の伝統工芸の中では初めて、経済産業大臣の指定する伝統的工芸品に認められ、チームDのキャプテンに就任させていただきました。キャプテンの器にふさわしいかどうか不安なんですが、一生懸命がんばりたいと思います。チームD、そして福マメの活躍に泥を塗るわけにはいきませんからね。塗るなら漆ですよね、やっぱり。

 さて、わたしに興味を持たれた方、ぜひ一度、|鯖江《さばえ》市|河和田《かわだ》地区にある『うるしの里会館』まで会いに来てくださいね。
 わたしの展示や販売はもちろん、職人さんの実演を見学できたり、漆塗りの体験ができたりと、まさに越前漆器のテーマパークになっています。わたしの美しさを|堪能《たんのう》しまくってください。

 さて、そろそろお時間ですね。以上、福音のマーメイド・チームDのキャプテン、越前漆器でした。他のメンバーも順番にご紹介していきますので、これからも、福音のマーメイド・チームDを応援してくださいね。


参考文献:

ふくいの伝統工芸品 | 福井県ホームページ http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/chisangi/dentoukougeihin.html

越前漆器協同組合 https://www.echizen.or.jp/