出口は遥か上にある。
手を伸ばしたって届かない。
彼女は見上げて唇を噛む。
それでも、彼女はあきらめない。
薄暗い部屋から逃げ出すために。
弱い心に別れを告げるために。
空虚な殻を叩き壊すために。
彼女はフレイルを振り回す。
暗闇から放たれた悪意が彼女を貫く。
彼女の体がひしゃげて飛び散る。
それは、色とりどりのジェリービーンズ。
甘ったるい匂いが立ち込める。
制服にまとわりついて、頭がぼうっとする。
それでも、彼女はあきらめない。
すぐに立ち上がり、また走り出す。
滑る手をスカートで拭って、必死に彼女の後を追う。
振り返った彼女は、優しく笑う。
とろけそうな甘さを、ありったけ詰め込んで。
どれだけ走っても、光は見えない。
正しい道を進んでいるのかわからない。
ただただ退屈を持て余していた日々。
その頃と、どちらが幸せなのかわからない。
だけど。
今は、彼女がいる。
世間からはぐれたあたしに。
世間に背を向けたあたしに。
彼女は、手を差し伸べてくれた。
彼女はきっとあきらめない。
たとえ、その体のジェリービーンズがはじけ飛んでも。
だから、あたしもきっとあきらめない。