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Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]

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#4 リスクを認識します(2)

 にらみ合う二人。
 かたや、レディーススーツ姿のSE。かたや、闇属性の制服アイドル。
 両者の中間には、各々自由に動き回る魔物が五匹。

 ……シュールだわー。この状況でも紅子はまるで他人事のような感想を抱く。

「……あ、あんたも、賊の一味なの?」

 闇属性の制服アイドルが、不安げな、しかし気丈な声で問いかける。

「いやー、通りすがりの美人SEなんですけど……」
「SE?」
「あ、美人の方は受け入れてくれるんだ。ありがとう」

 そんな軽口を叩くのも、不安な心の裏返しだ。実際、紅子の背中には冷や汗が伝っているが、相手が緊張している様子を見てやや落ち着きを取り戻す。
 紅子は必死でこの現状を理解しようとする。大丈夫、|顧客《クライアント》のカオスな要求を必死で理解しながら商談するのには慣れている。あいつらホント意味わかんないことを好き勝手言って……おい営業、お前もそっち側に立つんじゃないよ。あとパソコンが壊れたとか言って電話してくる友人のカオスな説明を日本語に変換しながら遠隔サポートするのにも慣れている。何かやったからそうなったんだって。何にもしてないワケないでしょーが……あー、だんだん腹立ってきた。いやそうじゃなくて。
 改めて考える。現実には存在しないような魔物達。その魔物を使役する――実際には全然言うことを聞いていないようだが――少女。彼女は紅子のことを賊の一味だと思っているようだ。たまたま本物の賊が他におり、それと対峙している最中だったのか。そもそも彼女は誰なのか。ここは彼女の家なのか……
 いろんな考えが紅子の頭をぐるぐる回る。

「えすいー……えすいー、って…………」

 一方、闇属性の制服アイドルも何か考え込んでいるようだ。しかもSEという単語にめっちゃ反応している。そんな食いつかれるとは思ってなかったんですけど。

「どっかで聞いたことあるんだけどな……」
「あ、あの、正式名称はシステムエンジニアと言って、あと実は和製英語で……」
「とりあえず、あたしの庭に不法侵入してるんだから敵だわ! 覚悟なさい!」
「あ、あれー?」

 なんだか良くわからないが敵と認識されてしまったようだ。まずいな。名刺とか出しといた方がいいのかな……

「あんた達、やっつけなさい!」

 威勢良く号令をかける闇属性の制服アイドル。その声を元に、魔物達は一斉に……パラパラを踊り始めた。あ、なかなかキレイに揃ってる。

「んもー! バカにしてんのあんた達! やっつけなさいよ!」

 闇属性の制服アイドルは地団駄を踏んで悔しがる。その様子を見ているうちに、やや緊張がほぐれてきた。

「……あのさ。あんまり状況が飲み込めてない状態で、何なんだけどさ」

 紅子は、闇属性の制服アイドルをなるべく刺激しないように語りかける。

「出来れば、穏便に済まさない? 得体の知れないモノをけしかけるのは、ちょっと待ってほしいんだけど?」
「う、うーん……」
「……レヴィ様! こちらの賊は残らず追い払いましたよ! レヴィ様! ……」

 交渉を開始しようとした矢先。もう一つの声が近づいてきた。