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Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]

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#10 Redmine始めます(2)

 がばっ。
 全ての作業を終えた紅子は顔を上げた。目に飛び込んでくる光の眩しさに、紅子はすぐに顔をしかめる。

「ひゃあっ!」

 一方のレヴィは悲鳴を上げた。驚きと恥ずかしさの混ざった可愛らしい声。汗ばんだ胸元が艶めかしく輝く。

「ぷはぁ……あ、終わったよ、メンテナンス」
「う、うん……」
「あなた、レヴィ様に何をしたんですの。詳しく説明しなさい」

 そっぽを向いてモジモジするレヴィとは対照的に、ジェミィは食いつかんばかりの顔で詰め寄る。

「何って……全部、解放しといたわ。今のこの娘はフル機能よ……あ、もう着ていいわよ、服」

 その言葉で、慌ててレヴィは真っ赤な顔で服のボタンを留め始める。

「お母さんの残したメッセージを読んだ。正直、ちょっとついていけない部分も多いけど……でも、あなたのお母さんが作り上げたシステムとか、意図だとか、その辺はなんとなくわかった」

 さっき読んだメッセージの内容を思い出しながら、紅子はレヴィに語りかける。

「あなたの中には、|Redmine《レッドマイン》というシステムがセットアップされてる」
「レッドマイン?」
「そう。プロジェクト管理の効率を最大限に高めるシステム。人も魔物も、チケットの指示を最大限に尊重して行動する。|管理者《マネージャー》は進捗を適切に管理し、また新たなチケットを発行する。その集合体が大きなうねりとなってプロジェクトを動かし、ひいては国を動かす……」

 ……って書いてあったよ。起動したてのRedmineのホーム画面に書かれていた言葉を、紅子はそのまま読み上げる。
 このRedmineというシステムを使って、果たしてどれくらいのことができるのか。紅子自身にもピンときていない。だけど、今までにない画期的な経験を、このシステムは与えてくれそうだ。そんな気がする。

「なんだか、すごいものがあたしの中に入ってるのね……」

 レヴィは胸元を手で押さえながら呟く。

「だけど、どうやって使っていいのか、全然わかんないんだけど……」
「それは、私が面倒見るわよ」

 ジェミィ、それからレヴィ。紅子は二人に微笑みかけると、レヴィにそっと手を差し出す。

「とりあえずさ。食事と着替えと寝るところ。これだけ用意してくれたら、あなたの中のシステム、私が責任持って請け負うわ。どう?」

 見知らぬ世界で出会った縁、というのもある。
 レヴィの母親が残したメッセージに共感した、というのもある。
 しかし、何より紅子を最も動かしたのが、エンジニアとしての好奇心だ。

 異世界のRedmine、使いこなしてやろうじゃないの。|システムエンジニア《SE》としても、|プロジェクトマネージャー《PM》としても、一歩も二歩も成長してやろうじゃないの。

 その固い決意に応えるように、紅子の手はやさしく握り返された。

 というわけで。
 藤倉紅子、異世界でRedmine始めました。