Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]
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がばっ。
全ての作業を終えた紅子は顔を上げた。目に飛び込んでくる光の眩しさに、紅子はすぐに顔をしかめる。
「ひゃあっ!」
一方のレヴィは悲鳴を上げた。驚きと恥ずかしさの混ざった可愛らしい声。汗ばんだ胸元が艶めかしく輝く。
「ぷはぁ……あ、終わったよ、メンテナンス」
「う、うん……」
「あなた、レヴィ様に何をしたんですの。詳しく説明しなさい」
そっぽを向いてモジモジするレヴィとは対照的に、ジェミィは食いつかんばかりの顔で詰め寄る。
「何って……全部、解放しといたわ。今のこの娘はフル機能よ……あ、もう着ていいわよ、服」
その言葉で、慌ててレヴィは真っ赤な顔で服のボタンを留め始める。
「お母さんの残したメッセージを読んだ。正直、ちょっとついていけない部分も多いけど……でも、あなたのお母さんが作り上げたシステムとか、意図だとか、その辺はなんとなくわかった」
さっき読んだメッセージの内容を思い出しながら、紅子はレヴィに語りかける。
「あなたの中には、|Redmine《レッドマイン》というシステムがセットアップされてる」
「レッドマイン?」
「そう。プロジェクト管理の効率を最大限に高めるシステム。人も魔物も、チケットの指示を最大限に尊重して行動する。|管理者《マネージャー》は進捗を適切に管理し、また新たなチケットを発行する。その集合体が大きなうねりとなってプロジェクトを動かし、ひいては国を動かす……」
……って書いてあったよ。起動したてのRedmineのホーム画面に書かれていた言葉を、紅子はそのまま読み上げる。
このRedmineというシステムを使って、果たしてどれくらいのことができるのか。紅子自身にもピンときていない。だけど、今までにない画期的な経験を、このシステムは与えてくれそうだ。そんな気がする。
「なんだか、すごいものがあたしの中に入ってるのね……」
レヴィは胸元を手で押さえながら呟く。
「だけど、どうやって使っていいのか、全然わかんないんだけど……」
「それは、私が面倒見るわよ」
ジェミィ、それからレヴィ。紅子は二人に微笑みかけると、レヴィにそっと手を差し出す。
「とりあえずさ。食事と着替えと寝るところ。これだけ用意してくれたら、あなたの中のシステム、私が責任持って請け負うわ。どう?」
見知らぬ世界で出会った縁、というのもある。
レヴィの母親が残したメッセージに共感した、というのもある。
しかし、何より紅子を最も動かしたのが、エンジニアとしての好奇心だ。
異世界のRedmine、使いこなしてやろうじゃないの。|システムエンジニア《SE》としても、|プロジェクトマネージャー《PM》としても、一歩も二歩も成長してやろうじゃないの。
その固い決意に応えるように、紅子の手はやさしく握り返された。
というわけで。
藤倉紅子、異世界でRedmine始めました。