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Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]

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#19 ロードマップを設定します

「……はあ、はあ…………さて、冗談はさておき、ちゃんとロードマップは設定しとかなきゃね」
「……ロード、マップ?」

 レヴィとの不毛な言い争いに疲れ、紅子は強引に話を戻す。ちなみにレヴィもぜいぜいと喘いでいる。

 さて、ロードマップとは……どう説明すればいいだろうかと紅子は考える。硬い表現をするなら、『目標達成に必要なタスクを列挙してスケジュールとして合意形成したもの』とでも言えばよいだろうか。
 ソフトウェア開発の現場で言えば、例えば『バージョン2.0』にはあの機能とこの機能を実装して、何ヶ月後を目標にリリースする予定だ、というものだ。もちろん、Redmineにもバージョン管理の項目がある。

 さて、このプロジェクトにおいても、最優先で解決すべき喫緊の課題が目白押しだ。その中でも特に重要なものを挙げるとすれば……

 まずは、敵の戦力と動向を探る必要がある。実はこれが一番重要だ。何しろ、今にも襲われそうな風前の灯火状態なのか、それとも全く歯牙にも掛けられていないのか、状況が全く掴めないのだ。それによりチケットの優先度が大きく変わってくる。

 それから、人手不足の解消。これも大問題だ。特にジェミィのような、サブプロジェクトのリーダーを任せられる人材が欲しい。|レイラ《お母さん》の|書き置き《README》やジェミィの話によれば、以前は何人か協力者がいたらしい。その人たちを説得して戻ってきてもらうか。または、この世界に他にもいるという、『|緑の格子盤《グリーンボード》』に反旗を翻した者。その人たちと合流するか……

 そして、レヴィの魔力の増強。何をするにしろ、今のままでは圧倒的に足らない。とはいえ、魔力の増強ってどうやるのだろう。筋トレみたいなことすれば魔力が増えるのかな。サーバーだったら、CPUを交換したりすれば良いのだが……

「……ちょっと、紅子。急に黙って考え込まないでよ」

 ふと我に帰ると、レヴィが寂しそうに紅子を覗き込んでいる。

「あ、オトナは今お仕事中だから、あっちで遊んでてね」
「むー」

 そんなやりとりをしながら、紅子は思いつくまま立て続けにチケットを発行していく。今の段階では、割り当て先も優先度も決めない『|新規《New》』のチケットだ。
 次に、それらチケットの一覧を眺めながら優先度を設定していく。これは重要、これは後回しでも大丈夫そう……ブツブツと独り言を言いながらチケットを編集する。
 最後に、バージョンを作成する。差し当たって『0.1』で良いだろう。そして、すぐに取り掛かるべきチケットにそのバージョンを設定していく。
 ……やがて、次にやるべきチケットのリストが完成した。

「お待たせ」

 紅子は顔を上げて大きく息を吐く。

「確かに、これなら何から手を付けるべきかが明確になりますね」

 ジェミィも感心しながらリストを覗き込む。

「ねー、結局あたしは何をすればいいの?」

 ほったらかしにされて少々拗ね気味のレヴィも一緒に覗き込む。

「そうねえ……まずやって欲しいのは、魔力の増強なんだけど」
「じゃ、それやるー。|割当《アサイン》……だっけ? それやってよ」

 瞳を爛々と輝かせ、弾んだ声でレヴィが言う。……出来るかどうかはあんたの努力次第なんだけどな、と紅子は思いながらも、モノは試しでやってみるか、と発行したチケットの担当者をレヴィに設定した。

 突然、あたりが光に包まれた。