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Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]

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#33 ガントチャートを確認します

 一枚のチケットが『|解決《Resolved》』に変化し、紅子は我に帰る。そう言えばプロジェクトの進捗を確認していたんだった。紅子は目を閉じて首を横に何度も振ると、再びガントチャートを目で追い始めた。

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 ガントチャートとは……プロジェクト管理によく使われる、いわゆるスケジュール帳みたいなものだ。やるべき作業の一覧と、その進捗度合いを一目で把握できるため、全体のスケジュール管理に都合がいい。
 まず、縦軸には発行したチケット、すなわちやるべきタスクが並ぶ。それから横軸はカレンダーのように日付が書かれており、チケットの開始日から期限日までの期間をグラフのように横棒で表現する。例えば四月いっぱいで実施するチケットなら、その一ヶ月分を横棒で塗りつぶすのだ。
 さらに、進捗率も一目で把握できる。例えば、今日が四月十五日であったとする。先ほどのチケットで言うと、日程の半分が過ぎているため、進捗率も五十パーセント以上に達していなければならない。もし実際の進捗に遅れがあった場合、その差分が赤く表示されるのだ。
 このように、進捗を視覚的に捉えることができ、スケジュールの遅れを未然に防ぐことができる。プロジェクト管理には必須のツールと言えるだろう。

 これをわざわざエクセルで作る……という無駄極まりない作業をしなくていい、というだけでもRedmineを使う価値がある、と紅子は思う。一回きりの会議資料のために、わざわざ手作業でガントチャートを書いていた頃の事を思い出し、紅子はどんよりとした気分になった。……ダメだ、また余計な事を思い出した。集中しないと……

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 ……魔力の増強により、ここ一ヶ月で紅子達のプロジェクト、通称『世界征服プロジェクト』は大きく進展した。人員も増えたし、何より召喚できる魔物の数、すなわち同時に発行できるチケットの数が飛躍的に増えた。今も、屋敷ではたくさんの魔物達が、資材を運んだり屋敷の改修をしたりとプロジェクトに従事している。
 また、大半のチケットが、期日を待たずして進捗率百パーセントに達し、プロジェクト管理者のレビュー待ちとなった。スケジュールを見直す必要があるな……と感じた紅子は、大幅に線表を引き直した。工程を後ろ倒しに修正するプロジェクトは何度も何度も経験したが、前倒しにするのはひょっとしたら初めてかもしれない。PMからすれば非常に優良なプロジェクトなのだが、ただ喜んでいるわけにもいかない。プロジェクトの実力を正確に見極め、適切なスケジュールを設定するのがPMの仕事なのだ。

 個々のサブプロジェクトについても、紅子は大幅な見直しを行った。
 まず、屋敷の防衛に関するサブプロジェクトは、思い切ってジーナとライカに管理者権限を委ねた。歴戦の傭兵であるライカと、妨害系の魔法に長けたジーナのコンビは防衛に適任であろう。
 実際に成果も上がっている。ジーナは、かなりの広範囲に『|信号衝突《コリジョン》』の魔法をかけたそうだ。仮に敵が攻めて来たとしても、方向感覚が失われることにより、屋敷に辿り着くのは非常に困難だろう。また、屋敷周辺に無数に設置された|探知機《ビーコン》により、敵の位置は手に取るように把握できる。迎撃は容易だ。

 屋敷の内部に関する事は、引き続きジェミィに一任している。増員により、かなり楽ができると喜んでいた。後任の育成が出来れば、ジェミィには他に任せたい仕事もあるのだが……

 さて、残りはレヴィだ。レヴィには改めて話しておきたいことがある。紅子は立ち上がり、部屋を出た。