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Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]

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#35 課題を管理します(2)

「……|地上索敵機《ホリゾンタル・ルックアップ》も|空中索敵機《バーティカル・ルックアップ》も、かなりの数を投入して島中を探索中です」
「それでも見つからないんだ……ホント、どこいったのかしらね、レイラ姉さまったら。早く見つけて改心させてあげなきゃね。お仕置きリストも充実してきたのに……そうそう、道具もいくつか取り揃えて……」
「気になる報告があります」

 話が不穏な空気に包まれてきた事を感じ取ったオデッサが話題を変える。

「先日、レイラ様の側近だった〈紅玉の刃〉ジェミィの痕跡についてご報告したのですが……」
「……あー、あったね、そう言えば。それどうなったの?」
「向こうも細心の注意を払っているようで、それ以外の痕跡は今のところ残っておりません。その付近に索敵機を集中させて探索に当たらせたのですが、彼女の姿を捉えることはできませんでした…………ですが」
「ですが?」

 エクシエラがさらに顔を近づける。

「……レイラ様の部隊に一時配属されていた、ライカという傭兵がおりまして。一件だけですが、その傭兵を見たという目撃証言がありました。索敵機からの画像を照合してみたところ、たしかにその傭兵の姿が写っていました……ジェミィの痕跡があった付近です」
「ふーん…………」

 エクシエラは何やら考え込んでいる。

「また、これも先日の話なのですが……南方の山中で、我が軍の|魔獣《イルカ》部隊が何者かに全滅されるという出来事がありました。そのうち三体の傷口を確認したところ、かなりの重量のある大剣によって付けられたもののようです……その傭兵が持っている大剣のような」

 ……エクシエラは黙ったままだ。じっとオデッサのおでこの辺りを見つめている。

「あくまで推測の域を出ませんが……そのジェミィと傭兵とが、接触を持った可能性が……」
「あたしが行く。|南《そっち》」
「えっ?」

 オデッサが驚いた声を上げると同時に、エクシエラも身体を起こす。

「南方制圧軍の指揮は、あたしが執るわ。さっきの頼りないヤツには、何か他の仕事を割り振っといて」
「しかし……よろしいのですか? 全体の指揮や、王城の守りは……」
「だって、なんか楽しそうじゃない? レイラ姉さまに関係あるヤツらが集まってるんでしょ? 南には。だったら、そっちに行ってみたいじゃない」
「いや、はっきりした情報ではないのですが……」
「でも、きっと何かありそうだわ……なんせ、この数ヶ月もの間、まったく何の消息も掴めなかったのよ? この『緑の格子盤』の調査力を以ってしても。それが、今になって少しずつシッポを現し始めた。何か、レイラ姉さまに動きがあったんだと思うじゃない? こんな面白そうなこと、他のヤツに任せとくのはもったいないわ」

 先ほどまでとは、また違った種類の笑顔だ。心底楽しそうな……ただ、その眼光は冷たく、鋭い。

「それに、あの子もいるかもしれないじゃない。……レヴィちゃん。久しぶりに会ってみたいわね。いや、何ならみんなまとめて連れて帰りたいわ」

 その名前を聞いて、オデッサはレヴィの事を思い出す。顔を合わせた事は数えるほどしかないのだが……天真爛漫で明るい感じは、確かに母親であるレイラと良く似ていたように思う。魔族としての力は……あまり持っているようには見えなかったが。

「留守番、お願いね。オデッサ」

 ……不意に、オデッサの唇が塞がれた。いつの間にか、エクシエラの顔は再び目と鼻の先……いや、鼻が触れ合うほどの距離に迫っていた。

「……信頼してるわよ」

 そうエクシエラは耳元で囁くと、笑顔で軽く手を振りながら、扉の向こうへと消えていった。
 後には、やや顔を赤らめて困惑した表情のオデッサだけが残された。