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Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]

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#43 wikiを活用します

「ねえねえ、他には? もっと楽しい機能はないの?」

 レヴィは身を乗り出して端末を覗き込み、面白そうな機能がないか探す。

「もう、紅茶がこぼれちゃうでしょ……他には、『|Wiki《ウィキ》』なんて機能もあるけど」
「ウィキ? 確かにちょっと楽しそうな感じはするけど……何するものなの?」
「多分、レヴィが思うような楽しい機能ではないけど……でも、共同での仕事には、とっても重宝する機能だよ」

 *

 |Wiki《ウィキ》とは……言わずと知れたWebシステムの名前である。Webブラウザ上から文書を編集でき、複数人での共同編集に適した、ナレッジ等の蓄積については|事実上の標準《デファクトスタンダード》と言ってもよい、あのシステムの事だ。
 Wiki専用のWebサービスやソフトウェアも多数公開されているが、その使い勝手の良さから、グループウェア等の一機能として搭載されている事も多い。もちろん、Redmineにも標準で搭載されている。

 *

「あと、Wikipediaの事を『Wiki』って略す人、ちょっと前へ出なさい。説教します」
「……何の話?」
「あんたは『日本銀行』の事を『日本』と略すのかと」
「だから、何の話だってば」

 *

 ……それはさておき。

 Redmineは、プロジェクトごとに専用のWikiサイトを持つことができる。
 プロジェクトが進行するにつれ、チケット内にナレッジは蓄積されていくが、情報がまとまっているとは言い難い。後から参照したり、プロジェクトへの新規参加者にもひと目でわかるようにするには、チケットとは別の形で情報をまとめておくのが良いだろう。Wikiは、その役目にうってつけだ。チケットへのリンクも簡単に記述することが出来るので、親和性も非常に高い。

 Wikiページを作成するのも非常に簡単だ。『Wiki』機能に最初にアクセスすると、いきなりページ編集画面が表示されて多少面食らうが、その大きなテキストボックスに任意の記事を書いて保存すれば、それがWikiのトップページとなる。記事の記法はTextileが標準で採用されているが、Markdownを使うことも出来るし、記法を使わずにプレーンテキストだけに制限することも出来る。他にも、記事に親子関係を持たせたり、ファイルも添付できたり、一通りの機能は揃っている。

 ……やっぱり、こういう知識の蓄積もWikiでやるべきだよね。ファイルに書いてファイルサーバーに放り込むっていう文化、早く脱却しなきゃな。
 あとは……個人的にはMarkdown記法は大好きなんだけど、Wiki特有の記法がちょっと取っ付きにくくて、敬遠する人達もいるかもしれないなあ……。でも、Wordすらまともに使えない人に、どうやって使い方を教えれば良いんだろう。……しまった、また愚痴っぽくなってしまった。

 *

「……というように、みんなで便利に使えるメモ帳みたいなもんかな。みんなで書き込んで、みんなで参照するための」
「ふーん」

 レヴィも、ジェミィに淹れてもらったミルクティーをゆっくりとすすりながら、じっと端末を眺めている。

「この屋敷で使うとしたら……例えば、料理のレシピなんか書いておくのもいいかもね。ジェミィの美味しい料理を、レヴィも作れるようになるかもしれない」
「なるほど。みんなで共有したいことを、どんどん書き込めば良いんだ」
「そうそう。……ま、仕事で使うとなったら、大まかなルールは必要だけど」
「せっかくだから、あたしも何か書いてみたいな。……何を書こう。日記でも書いてみようかな」

 ……それは、もう既に別のところに書いてあったよ。無意識のうちに。管理者権限で隠しておいてあげたけど。