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Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]

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#51 インシデント

 その朝は、轟音と共に訪れた。
 ベッドから飛び降りた紅子は、慌てて枕元の端末を掴むと部屋を飛び出す。

「紅子様!」

 階上から紅子を呼ぶ声。ジェミィの声だ。慌てて紅子は階段を駆け上がる。寝起きで全力疾走は辛いが、そんな事を言っている場合ではない。

「ジェミィ! 大丈夫!? 何があったの!」
「紅子様」

 ジェミィは最上階の部屋にいた。振り返ると、窓の外を指差す。

「……ご覧ください」

 言われたとおりに窓の外を眺めた紅子は、あまりの事に言葉を失う。
 最上階からよく見渡していた、のどかな景色。それが一変していた。遠くに広がっていたはずの森林や丘が大きくえぐれ、土をむき出しにし、もうもうと煙をあげている。まるで、隕石でも落ちたかのようだ。

「……これって……」
「敵襲ですね。間違いなく。それも、あの魔法の規模からすると……〈翠玉女帝〉エクシエラ自ら出陣した、というところでしょう」

 *

「……どうかなー? この辺だと思うんだけど。ハズレかなー?」

 放った魔法弾の行方を満足そうに見届けながら、エクシエラは声を上げる。

「ま、あんなの見たら、ビックリして何か行動起こすだろうねー。黙ったままだったら、もう一発ぶち込めばイイし。……出来れば、降伏してくれるとラクなんだけどねー。そしたら、あんなオシオキやら、こんなオシオキやら……」

 一行を捕まえた後の事を想像し、エクシエラは笑みを浮かべる。

 *

 部屋には、ライカ、レヴィ、ジーナも集まってきた。重苦しい空気に包まれている。

「しかし、エクシエラは何だってこんな……」
「……これは、あくまで推測ですが」

 ジーナがゆっくりと話し出す。全員、彼女の声に静かに耳を傾ける。

「私がかけた|信号衝突《コリジョン》の魔法によって、この屋敷を発見するのは非常に困難です。しかし、魔力通信の流れや偵察機による監視によって、ある程度の範囲まで絞り込むことが出来たのでしょう。それで、エクシエラ自ら制圧に来た」

 ジーナは続ける。

「しかし、屋敷はなかなか発見できません。……もちろん、エクシエラのように強大な魔力を持つ者になら、私の魔法は解除されてしまうでしょう。しかし、そのためにはこの屋敷にかなり接近しなければならず、結局しらみつぶしに付近を探索する必要があります。……その手間を嫌ったか、あるいは威嚇の意味で……」
「一発、巨大な魔法弾をぶっ放した、というわけか」

 ライカがため息混じりに吐き捨てる。

「|信号衝突《コリジョン》の魔法は、あくまで魔導通信の流れを乱して、相手から認識されにくくするものです。あんな巨大な魔法弾が、例えまぐれでもこの屋敷に命中したら……おそらく、ひとたまりもありません」
「いかにエクシエラとは言え、あのクラスの魔法弾を連発するのは難しいだろう。しかし、探索により範囲を狭めていけば、いつかは……」

 もう、時間はないということか。紅子は考える。
 出来ることなら、もっと時間をかけて協力者を増やし、力をつけたかったのだが……こうなってしまった以上、すぐにでも行動を移さなければならないだろう。しかし、このままではどう考えても勝機はない。とすると、残された道は……

「紅子、どうしよう」

 心配そうな顔でレヴィが問いかける。そうだ、こんな時こそ、|プロジェクトマネージャー《PM》として、メンバーに堂々と指示を出さなければならない。
 紅子は、決意に満ちた表情で切り出した。

「みんなに、話があるんだけど」