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Redmineで始める異世界人心掌握術 [異世界ファンタジー/長編/完結済]

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#53 進行中 《Assigned》

「おおっ?」

 屋敷の周囲を徘徊していた『|緑の格子盤《グリーンボード》』の兵からどよめきが上がる。

 この付近にあるのがわかっていながら、なかなか場所を特定できなかった『|紅の宝庫《レッドマイン》』の拠点。その屋敷の姿が、ゆっくりと兵たちの前に浮かび上がってくる。

「敵の拠点が現れたぞ!」
「恐れをなして降伏するつもりか?」
「よし、皆で取り囲むぞ!」
「かかれ!」

 血気に逸った兵たちは、我先にと屋敷へ殺到する。

 *

「……あれ、どう考えてもワナだよねー……」

 突如出現した屋敷を本陣から眺めながら、エクシエラは呟く。
 確かに、仕掛けたのはこちらが先だし、探す手間が省けたのは良いのだが……あからさまに怪しい。こうも簡単に姿を現されると、いろいろ疑いたくもなるのだが。

「あんたら、もうちょっと冷静に動きなさいよ……」

 ブツブツと文句を言いながら、エクシエラは指令用のスプレッドシートに命令を書き込む。……ところが、|指令《シート》の末尾に追記されたその言葉に気付く者は少ない。

「おーい。みんな、|指令《シート》見てる?」

 *

 やがて、いくつかの隊が屋敷へと辿り着いた。しかし、静まり返った屋敷の様子に動揺が走る。

「屋敷は静かだぞ! 中に敵はいるのか!」
「罠か?」
「構わん! このまま突入するぞ!」
「いや、まずはエクシエラ様に報告しなくては!」

 小隊長の一人が、慌てて|指令《シート》を開き、報告を書き込む。

 *

「ちょっと、誰よ! 書き込みモードで|指令《シート》開いてるの! こっちから書き込めないじゃない!」

 新たな指令を追記しようとしたエクシエラは、読み取り専用で開かれた|指令《シート》に向かって悪態をつく。
 まったく。こっちから指令がありそうな時は開くなって、さんざん言ってきたのに。本当に空気の読めない奴らだ……

 そうこうしているうちに、同じディレクトリに似たような名前の|指令《シート》がもう一つ作成された。

「だから、書き込めないからってコピーを作るなって! どっちが新しいのか見比べるのが面倒なんだって! もう!」

 エクシエラは怒りに任せて拳を振り下ろす。

 ……混乱する『緑の格子盤』とは対照的に、紅子たちの作戦は着々と進行していた。