藤倉紅子のすべらない話(Redmineで始める異世界人心掌握術)

 ……あ、どうもはじめまして。|藤倉紅子《ふじくらこうこ》と申します。|システムエンジニア《SE》やってます。

 あのー、私こないだまで、|Redmine《レッドマイン》で魔法が発動する異世界に行ってたんですよ。……本当です。本当なんですよ。誰に言っても信じてもらえないんですけど、本当に行ってて。なんか、本屋でRedmineの参考書を手に取ったら、急に異世界にいたんですよ。本当に。

 ……あ、Redmineってシステム、ご存知ですか? SEやプログラマー以外の方にはあまり馴染みがないと思うんですけど。
 Redmineって、プロジェクト管理ツールの名前なんですけど。ソフトウェアの開発なんかをする時に、進捗管理をするシステムなんですよ。
 個人でも、「やらなきゃいけないこと」をメモとか付箋とかに書いて管理したりするじゃないですか。あれのもっとしっかりしたヤツだと思ってもらえればいいです。
「何々っていう機能をつける」とか、「あのバグを直す」っていう|課題《タスク》をシステムに登録して。あ、その課題のことを『チケット』って呼ぶんですけど。で、そのチケットに書いてある課題をひらすらこなして、全部なくなったら終わり! っていう方法で管理するんです。ま、1つ終わる頃にはチケットが3つくらい増えてるんですけどね。いつまでも終わんないよー、っていう。

 で、私のいる職場って、このRedmineっていうシステムも導入してなかったんですよね。全部エクセルで課題リストを管理してて。で、私、このエクセル管理がもうすっごい嫌で。はらわた煮えくり返ってたんですよ。他の人が開いてて上書きが出来ないもんだから、名前に『_1』とか付けて別名で保存したりして。……よくありますよね。で、ファイルが際限なく増えてくんですよー。どれが最新だよ、って。木の葉を隠すなら森の中、って感じですよ。隠してどうすんだ、って。課題増やしてどうすんだ、って。

 で、何か効率の良い管理手法を探してたら、『Redmine』っていうツールを見つけて、で何故か異世界にいたという。……だから本当なんですって。

 その世界が面白くて、そのRedmineでチケットを発行することで、魔法が発動する世界なんですよ。すごいなあって。「掃除手伝って!」っていうチケット発行すると、どこからか魔物が出てきて手伝ってくれるという。めっちゃ便利で。「この夏流行りのメイクで!」ってチケット発行したら化粧が出来上がってるの。すっごい楽でしたよー。

 でも、これチケット発行すると、ある魔族の女の子の魔力を消費しちゃうんですよ。疲れるらしいんです。「そんなことでチケット発行しないでよ!」とか、ゼイゼイ言いながら飛び掛かってきたりして。「なんか最近疲れると思ったら!」とか言って。大ケンカになって。余計疲れるという。

 ……あ、そのシステム、誰が作ったかって? なんか、その世界にも天才的なSE兼プログラマーがいて。さっきの女の子のお母さんなんですけど。
 で、自分の魔力とRedmineのプロジェクト管理機能を融合したシステムを、自分の娘のために残したらしいんですよ。……母の愛ですよ。そう。

 その女の子ってのが、本当頼りなくて。なんにも考えてないようなバカっぽいヤツなんですけど、何故かほっとけなくて。情がうつるというか、なんかそんな感じで。一緒に旅したりしたんですけど、道中ケンカばっかりだったんですけど、でも楽しい思い出ですよ。

 あ、私とその魔族の女の子の活躍は、『Redmineで始める異世界人心掌握術』というタイトルで、GitHubで連載してますので、良かったらぜひ読んでみてください。……え? そうですよ、宣伝ですよ。

 Redmineで始める異世界人心掌握術
 https://github.com/8novels/redmine-fantasy