1-2 藤沢那子、冬を語る

1-3 藤沢那子、思案する

 敦賀市|山泉《やましみず》。  市の中心部からやや南に位置する、山沿いの住宅地。ここで私――藤沢那子《ふじさわなこ》は今日も朝を迎える。

 すぐ近くにはJR小浜線西敦賀駅があり、これまた近くにある敦賀工業高校に通う生徒が毎日乗り降りしているが、私はどちらも利用することなく、毎朝ここから敦賀高校までの約五キロの道程を自転車で通学していた。  ただし、今日は第二土曜日、学校は休みである。特進クラスなんかは今日も朝から授業らしいが、私には関係のない話だ。ついでに言うと、今年からは第四土曜日もめでたく休みとなった。企業では完全週休二日制が徐々に浸透しているらしいが、敦賀高校に導入されるのはまだ先の話だ。

 今朝の寝覚めはそれほど悪くなかった。冷え込みはそれなりに厳しいものの、カーテン越しでも眩い光が差し込んでくるのがわかる。快晴なのは間違い無いだろう。あと懸念事項といえば雪だ。まあ仮に降ったとしても、週末の間に溶けてくれればいい――反動をつけてベッドから飛び起き窓際に立った私は、一息ついた後、一気にカーテンを開ける。

 閉める。

 開ける。

――残念ながら景色は変わらなかった。

 その景色は、最悪の事態を想定した景色よりも、さらに四倍から五倍ほど白かった。  まず飛び込んだのは、ただただ白くまばゆい光。寝起きの瞳にはかなり刺激が強い。庭や隣家の屋根、田畑を覆い尽くす雪が朝陽を反射しているのだ。  ところが――  目が慣れてくるにつれ、この光景が持つ異常性が少しずつ見えてきた。

 まず、隣家の瓦屋根。昨日まで光沢のある濃いグレーだった屋根が、今は一面余すところ無く白に変わっている。ところが、瓦の輪郭ははっきりと見て取れるのだ。雪が積もったのなら、こうはならないはず。改めて見直すと、《《白いペンキで塗った》》ような、という感じに近い。  遥か先まで広がる田園風景も、一面雪に覆われている、ように見える。ところが、だ。遠くの方に視線を移すと、そこは土色が剥き出しになっている。雪がないのだ。はっきりとは言えないが、敦賀を縦断する|笙の川《しょうのかわ》を境としてくっきりと二分されているように見える。

 もともと拙い上に寝起きで低出力状態の脳を必死に回転させ、状況を分析する。  最初に私が雪だと認識した白い物体。これはどうやら――私の理解の範疇を超えているが――雪ではない、のかも知れない。

 じゃあ、何だ?  私はパジャマのまま部屋を飛び出し、階段を駆け下りた。

 庭に面した大きなガラス戸の前に立ち、予想は確信に変わっていく。  庭木の葉に積もる白い物体。いや、より的確に表現すると、葉にこってりとまぶしてある物体。それは、私の知る雪とは全く別の物体だった。  私の短い人生経験で得た記憶をフルスキャンし、最も似ていると思われる物体を弾き出す。

「――ベーキング、パウダー?」